2020年7月3日(金)に新たな池袋のシネマコンプレックス「TOHOシネマズ池袋」が開業する。池袋エリアと言えば昨年7月に「グランドシネマサンシャイン」が開業しました。そんな新しい二館に加えて現在エリアでは老舗のシネコンとなっているのが「池袋HUMAXシネマズ」です。
【1】TOHOシネマズ池袋はどのようなシネコン?
近隣に日本国内屈指のスペックを誇る「グランドシネマサンシャイン」が既にあるわけですが、TOHOシネマズはどのように対応していくのかというのは筆者的にも注目している点でありました。
TOHOシネマズ池袋はどうやら「音響」重視で対抗していくようだ。
1)「Wプレミアムシアター」
TOHOシネマズとしては既に日比谷、熊本サクラマチといったサイトで展開中の「プレミアムシアター」を池袋に2スクリーン導入する。
(1)「TCX/Dolby-Atmos/カスタムスピーカーetc...」
一方は立体音響システム「Dolby-Atmos」をカスタムされたスピーカーで導入する。ドルビーアトモスは既にグランドシネマサンシャインでも”BESTIA”というスクリーンに採用されていますがどのような違いがあるのかというと以下の通り。
スピーカー毎に自在に音を配置、移動できるDolby Atmos®の魅力を最大限発揮できるように、天井を含めたサラウンドスピーカーに指向性の高いハイパワーコアキシャルを採用。ステージスピーカーは6番同様「カスタム4wayハイコアキシャル」を採用し、プレミアムサウンドはそのままに、音がスクリーン内を縦横無尽に動き回る極上の鑑賞環境を提供いたします。
正直それなりに知識はある私でも完全には理解出来ていないのですから普通の人にしてみればどういうことやらって感じでしょうが要するに
普通のドルビーアトモス(グランドシネマサンシャイン)よりも更に良い環境なんだぞ!
ということでしょうかね。
(2)「TCX/コンサートホールのような音響」
もう一方にはTOHOシネマズ日比谷のスクリーン1にも導入されている「コンサートホールのような音響」をコンセプトとした音響設備となっています。
日比谷のメインシアターのコンセプトである「コンサートホール」のようなプレミアムサウンドの音響監修を行った“株式会社イースタンサウンドファクトリー”が、当劇場用に監修しました。高解像で音の再現が可能な「カスタム4wayハイコアキシャル」と、ステージスピーカーとの一体感を突き詰めた「3wayコアキシャル」サラウンドを組み合わせることで、高域から低域まで繊細な音響体験が可能に。これらの音響設備により最上級の鑑賞環境を提供いたします。
まぁこれも全く知識ない人にしてみればなんのことやら(正直私も)って感じですが要するに
普通よりも断然良い環境の音響で鑑賞できますよ!
っていうことでしょうね。
2)轟音(ごうおん)を全身で体感できる日本初のサウンド・シアター
もう一つの注目点であるのが2番スクリーンに採用される設備。なんといっても音の体感・迫力あるサウンドを意識しているそうで。
アイソバリック方式を採用したサブウーハーを日本で初めて劇場に導入。アイソバリック方式はスピーカーユニットを向かい合わせで駆動させることで、通常のサブウーハーの1.5倍~2倍のパワーを発揮します。他の劇場では体験できない、空気を震わせる体感型サウンド・シアターを実現します。
個人的には「立川シネマシティ」「川崎チネチッタ」でいうところの”極音・極爆上映”と”LIVE ZOUND”を意識したスクリーンなのかなと予想しています。
今年9月にはそんなシネマシティのお膝元に”TOHOシネマズ立川(仮称)”をオープンさせるのでこのスクリーンで対抗してくるのではとも思ったり。ちなみにTOHO立川には既にIMAX(レーザー?)を導入することが確定(映画館外壁にIMAXロゴが設置されているとのこと)なので本気であるのは間違いないでしょう。
3)その他設備
Wプレミアムシアターには他の都心のTOHOシネマズでも採用されている「プレミアボックスシート」(追加料金1,000円)が採用されます。更に上位のシート「プレミアラグジュアリーシート」(追加料金3,000円)も採用してくるかと思っていましたがそこまでは至らなかったようですね。
ちなみに現時点ではスクリーンサイズについては掲載されていないのでどのぐらいのサイズになって来るのかは気になるところですね。
4)個人的な感想
一部ではグランドシネマサンシャインの唯一の弱点ともいえる「ドルビーシネマ」を採用してくるのでは?という期待を寄せる声もありましたがこれは実現しませんでしたね。恐らく「ドルビーシネマ」に関してはTOHOシネマズは導入の締結はまだ結んでいないのではないかなとは思っています。ドルビーアトモスは国内で一番採用しているのにね・・・。
また”MX4D”の採用も見送られています。これはTOHOシネマズが「Hareza Tower(ハレザタワー)」という複合高層ビルのテナントとして入居するため、上層部にオフィスがあることを考えると振動が伝ってくるというのは望ましくないのでこれは予想の範疇ではあったかと思います。また通常のスクリーンで見てると4Dスクリーンの振動が伝わってくるという弊害もあるのでこれはこれで良いと思います。(ちなみにグランドシネマサンシャインには4Dシアターがありますがあちらの場合はシネコンが核であるビルというのもあって4D上映の振動が凄いという問題はないのでしょう。)
最後に「IMAX」の採用は当然ながら見送られました。これは近隣の「グランドシネマサンシャイン」が”IMAXレーザー/GTテクノロジー”というIMAXの中でも日本国内に2館しかない最高峰の環境のスクリーンがあることを考えればTOHOシネマズがIMAXを導入しないのは当然分かることでしょう。(ちなみに都市伝説程度なので真相は分かりませんが同エリアにIMAXを2館以上建てられないとかいう話があります)
【2】TOHOシネマズとGDCS、どのように棲み分けられるか?
とはいえ、昨年オープンした「グランドシネマサンシャイン(以下、GDCS)」も日本屈指のスペックを誇るシネマコンプレックス。なんといってもスクリーンがビル6階建ての高さがある「IMAXレーザー/GTテクノロジー」をはじめ、「4DX SCREEN」「BESTIA(Dolby-Atmos/dts:X)」といった特殊上映システム、全スクリーンに4Kレーザープロジェクター採用といいまるで非の打ち所がない最強のスペックだ。
TOHOシネマズがこの最強布陣ともいえるシネコンに太刀打ちできるのかしら?
1)GDCSは導線が悪い
GDCSは下は3階、上は12階まである縦に長いシネコンです。それゆえ入口からスクリーンまでの移動が結構面倒というデメリットがあるのです。更にエレベーターも数基あるとはいえ時間がかかるかつエスカレーターが1列しかないので輸送力が更に乏しい。特に目玉のIMAXシアターはそんな最上層・12階にあるかつ一番キャパの大きいスクリーンなんで、私は開業当初に行ったという悪条件だったのもありますが入口から10分弱かけてスクリーンまで行った記憶です。
それと比較するとTOHOシネマズ池袋は入口が2階、上層でも5階であるため入口からスクリーンまでの移動はそこまで時間がかからず導線は良い方であると予想できます。
映画好きなら4Kレーザー採用のGDCSでしょ!って人も多いかもしれませんが、普通に映画を観たい人にしてみれば4Kレーザーなんかよりも導線優先!って人も当然多いでしょう。
2)「TOHOシネマズ」の一般的なブランドは想像以上に大きい
TOHOシネマズは東京都内に12館(今回オープンとなる池袋、9月オープン予定の立川含む)という大手シネコンとしてもダントツの出店率を誇っています。東京都心で映画観るなら「TOHOシネマズ」となるのも当然の流れとも言えるわけです。
加えてその系列のポイントカードを保有しているなら尚更同じブランドの映画館で見ようという意識は高くなるでしょうから「TOHOシネマズを利用しよう」という人も多いのでしょう。
3)東宝配給作品の上映の有無
上映できる作品が限定されるというのも大きな点であります。GDCSでは一部を除き東宝が配給する作品は上映しない(出来ない?)のです。これは旧・シネマサンシャイン池袋時代からそうでしたので昔の名残でしょう。
一方のTOHOシネマズ池袋は当然ながら東宝系作品は上映できます。「配給なんかで客入り変わるわけないやろ!」と言いたいところですが東宝に関しては少し別格でやはり興行成績が他の配給会社と比較しても高めなので劇場側にとってもかけられるか否かで多少なりとも変化はあるでしょう。
【3】池袋HUMAXシネマズはどうなる・・・?
ぶっちゃけこの新しい二館に関してはなんやかんや共存していけるでしょう。その一方でTOHOシネマズ池袋のオープンで暗雲が立ち込めて来そうなのが「池袋HUMAXシネマズ」であります。
1)「旧・シネマサンシャイン池袋」と共に池袋エリアを支えてきた
池袋HUMAXシネマズとしては2000年にリニューアルオープンした映画館ではありますが、基をたどれば昭和時代からある老舗の映画館です。GDCSの経営を行う佐々木興業が以前まで経営していた「シネマサンシャイン池袋」も1985年からある老舗の映画館でこのHUMAXシネマズと共に池袋の映画館として支えて来ました。そして昨年7月のGDCSオープンと共にシネマサンシャイン池袋は役目を終えました。
なおGDCSとなってからも東宝配給作品は基本的に上映されず、HUMAXシネマズが主に東宝系作品を上映していました。これで池袋エリアは棲み分けがされていたのです。
ところが今回のTOHOシネマズ池袋のオープンでその棲み分けが崩れてしまう。HUMAXシネマズにとってもここが正念場となって来るでしょう。
2)当然ながら新しい映画館にはそうそう敵わない・・・
映画の鑑賞料金は基本的に映画館が新しかろうが古かろうが基本的には一律の料金となっています。要するに同じ作品を上映している場合に古臭い映画館と新しい映画館のどちらで観ようと料金は同じわけです。
これを池袋で例えてみればある作品が新しくオープンしたばかりのTOHOシネマズと少し設備が古いHUMAXシネマズとして果たしてどちらで観たい?と言ったら前者を選ぶ人も多いのではなかろうか。まぁ厳しいものですがこれが現実ではあると思います。
HUMAXシネマズがこの二館に対抗していくには何らかの対応策を練る必要はあるでしょうね。