満を持して公開したであろうウマ娘の映画ですが、最終の興行収入は約15億円弱ぐらいで落ち着きそうですね。
大規模公開作品における大まかなボーダーラインともいえる10億円以下で着地してしまう事態は免れましたが、配給の東宝や公開初週の映画館の待遇を見ると20~30億円は見込んでた待遇な感じであったようにも思え、やや期待外れ感は否めません。
一言で言えば作品自体はファン中心に好評も、あまり触れたことない層まで口コミ等でほぼ波及していない感じだと思います。
まあ結果論ではありますがソシャゲユーザーかつ様々な映画の興行収入も追っている人間が、そんなウマ娘の映画の興行に対する考察をしてみましたので興味がある人は見てみてくださいな。
1)幅広い客層を取り込むにはあまりにも映画化が遅すぎる
今回の映画をどのような経緯で公開に至ったかで色々話は変わってはきます。
仮に完全にファン向けに徹しているなら十分でしょうが「ソシャゲをやっている客層以外も取り込み大ヒットを狙っていた」のであれば、流石にこの映画化は遅すぎたのではないかと個人的には思います。
現在もウマ娘の人気自体は十分あるでしょうが、後述のような最盛期に比べると大分ライトな層は抜けていき、ハマった層がある程度残っているというのが現実でしょう。
アプリリリースや世間的にも「うまぴょい!」と話題になってたのは2021年のこと、もう3年前の話であります。この時期であればモデルを知らずとも興味本位で観てみるかーという人も中には結構いたでしょう。
まあ勿論ソシャゲと同時並行で映画化も進行するのは共倒れした時のリスクがありますから同時期にすべきだったとは言いませんが、それでも2022~23年あたりと早めにすべきであったでしょう。
2)映画化に相応しいキャラは誰?
まぁソシャゲやアニメで触れている人はともかく、そもそもウマ娘をあまり触れていない人がパッと浮かぶキャラと言えば誰だろうか?
例えば一切ゲームをやらない人でも「ポケモンならピカチュウ」「マリオなら勿論マリオ」とスッと出てくる人も多いでしょうが、ウマ娘で誰が一番認知されているかと言われると分からない、そもそもキャラ自体をよく知らないという人も多いでしょう。
強いて言えばアプリのアイコンやよくポスターで先頭を張ってるピンクの子(スペシャルウィーク、上記)のイメージが強いのかなとは思いますが。
あとはあまり詳しくない人でも見たことあるといった感じで名前が挙がるのはライスシャワーとトウカイテイオーあたりはよく聞く気がします。
実は本作の主人公はソシャゲの方でも未だに実装されていない(公開初日時点)
そして本作の主人公に抜擢されたのは、あの芸人トリオの由来にもなっている「ジャングルポケット(以下、ジャンポケ)」というウマ娘(そもそも本作にメンバーの斉藤さんがゲスト出演してる)のですが、実は同じく主要キャラのダンツフレームと揃いも揃ってソシャゲの方では実際にプレイできるキャラとして未だに実装されていない。
(※厳密にはゲーム上で重要なサポートカードとしては既に登場している)
(※ジャングルポケットは映画公開後、6月中旬よりキャラ実装されました)
また作品のキーキャラともいえるフジキセキに関してもキャラとして実装こそされていますが、サポカとしては最上位のSSRすら実装されていないという中々扱いが酷い状況です。そしてダンツフレームに関してはキャラ実装はおろかSSRサポカすら登場していません。
ジャンポケには悪いですが、育成キャラとして実装されておらず確固たる人気もまだまだであり知名度も今一つのキャラを主人公に据えるのは「映画のヒットを本気で狙いに行くならおかしいでしょw」とは思ってしまうワケです。
少し違うかもしれませんが「サトシが卒業してまだ間もなく、まだまだ知名度としては弱い現在のTVアニメの主人公を据えてポケモンを映画化する」ようなもんです。
Cygames的には映画で盛り上げてジャンポケ実装と行きたかったところなのかもしれませんが、あくまで映画興行のみに関して言えば甘い見通しだったのは否めません。
配給およびTVアニメ版の企画も手掛けていた東宝にしてみれば映画興行は本業であり、そういった動向や旬も重要なのは分かっているでしょうから「もう少し早い段階で映画化しとけば...」とは内心思っていてもおかしくはないような気もしますね。
3)ソシャゲの映画化は難しい
過去にもソシャゲの映画化というのはあり、モンストなんかが最たる例でしょう。
公開当初は「入場特典でゲームの方の10連ガチャを廻せるぞ!」ということでプレイヤーたちが押しかけ、公開2日間で初動約4億、映画ランキングは初登場1位というロケットスタートを切ることが出来ましたが、後々映画を観なくても映画館の近くに行けば実は廻せることがバレてしまうと2週目以降はランキング8位まで急降下と一気に観客動員が失速してしまうという珍事が起きました。
通常の映画だと公開2~3日間の初動に対して最終の興行収入は約5倍ぐらいと言われているなか、このモンストは初動4億、興行収入10億以上であれば名前が載る映連のサイトでは掲載されておらず最終興収10億未満(たしか約8億ぐらい)だったという究極の初動型の推移であり、ある意味伝説を作ってしまったわけです。
前述の確固たる知名度を誇るキャラがいないという話にも通ずるところではありますが、このようにソシャゲの方は好きでやっていても実際映画やアニメなどの派生作品までは興味ないという人も結構多く、ソシャゲが人気だからと言ってヒットさせるの意外と難しいんですよね。
総評
作品の出来としては申し分ないクオリティ
https://x.com/uma_musu_movie/status/1804710987662270695
ここまでネガティブ意見しか言ってきませんでしたが、私はウマ娘はソシャゲをやっている身(アニメは2までは追ってました)なのでやや贔屓目とはいえますが作品としては全体的に良かったと思います。
内容も史実を知らない人間でも中々面白い内容だと思いますし、今回の作品は少し前にやってた総集編と比較してもモーションや音響の観点などクオリティとしてもかなり上がっており全体的に良かったと思います。
映画観てポッケ君よりフジさん育ててえーと正直思いましたね(地道にピース集めるのは結構無理あるのでそのうちガチャですり抜けませんかねー)
興行という面では前述のような疑問点も
ただ映画の興行収入などにも興味があり、あらゆる作品の数字を追ってる人間としては「本当にサイゲは映画ヒットさせる気あった?」と思ってしまうような部分も見られます。その辺も上手く混ざり合わないと大ヒットに繋がらないのも映画興行の興味深いところではあります。
まあタラレバを言うなら世間的に「うまぴょい!」と言われていた数年前に映画化して、その時点でそこそこ知名度はあったであろうキャラを主人公に据えた状態で公開していたらどのぐらいヒットしたのだろうか?とは思ってしまい、逆に個人的にはモヤモヤしてしまいましたね。