全世界興行収入1位を誇る「アバター(2009)」、そんな世界で最も稼いだ大ヒット映画の続編が12月16日に公開されました。日本でも当然初登場1位となるかと思いきや…、なんと3位スタートというなんとも言えないスタートとなりました。
日本を除く世界各国では初登場1位となっている
- THE FIRST SLAM DUNK(動員36.5万人、興収5.47億円)
- すずめの戸締まり(動員31.6万人、興収4.14億円)
- アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(動員25.9万人、興収4.77億円)
- Dr.コトー診療所(動員23.5万人、興収3.20億円)
※上記は土日2日間(2022年12月17・18日)の日本国内の動員ランキング
※公開3日間の成績「アバター(動35.4万、興6.46億)」「コトー(動35.4万、興4.78億)」
続編である「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は日本の他にも海外135カ国で公開されており日本を除く全ての国で初登場1位を記録していますが、日本では「スラムダンク」(3週目)、「君の名は。」などでお馴染みの新海誠監督最新作の「すずめの戸締まり」(6週目)に次いで初登場3位という、とんでもない記録を出した前作の続編としては中々不甲斐ない成績を叩き出してしまいました。
なんなら同週4位かつ同日公開であった「Dr.コトー診療所」と公開3日間の動員数はほぼ互角で単価の差のみで興行収入はなんとか上回っている状態です。
とはいえこれは日本人が悪いのではなく正直この作品に問題があると個人的には思います。
*上映時間192分という飛び込みで観るのを躊躇うレベルの超大作
この作品の最大の問題点と言えるのが本編192分(3時間12分)という目や耳を疑う長さであるということ。ただでさえ2時間程度でもスマホを上映途中に見てしまう人がいるほど飽きやすい人も多いのに、内容が面白くなければいくら映像的にスゴい!と言われても正直修行というか苦痛でしかないですよね。
まあ実際に見てみると3時間超えを感じず思ったより面白かったという感想もありますが、やはり前作同様大して内容は面白くないと言った声もあり賛否両論という感じです。
上映時間の長さは観客の感じ方だけでなく物理的にも支障が...
3時間超えの大作であることは仮に面白くなかったらという観客目線だけでなく、映画館的にも支障が出てきます。
映画館は早くても大体8時スタート、ナイトショーがないところであれば大体24時に全ての上映が終了します。即ち約16時間営業していると仮定すると、予告含めて2時間強の作品であれば、館内の清掃約20分を含んで1作品トータル150分。そうなると1スクリーンで120分程度の作品をかけ続けるとすれば1日5〜6回上映することが出来ます。
一方この作品はどうでしょう?本編192分に予告が13分あると仮定して205分。さらにスクリーン内の清掃時間を35分と仮定するとトータル240分。即ち1回上映するのに約4時間を要するわけです。そうなると頑張っても1日4回上映するのが精一杯。物理的に機会損失が大きいんです。
また新作がヒットするたびに当然ではありますが旧作はお客さんの入りやすい時間帯(平日なら学生・社会人の帰る時間、土日なら日中)に上映回を用意してもらいにくくなります。ましてやアバター2級の上映時間の作品があるなら間違いなく良時間帯には突っ込みにくくなるので朝イチやレイトショーの時間帯に飛ばされやすくなるというデメリットも考えられます。
社会人が平日に観るのはほぼ絶望的?
そして上映回数の問題だけではない。上記の仮定でいけば上映時間は8時、12時、16時、20時という周期となるため、平日の仕事帰りに観るのは中々キツいスケジュールであることがわかる。普通はやはり9〜17時勤務の人が多いでしょうから16時台からスタートされたら間に合わない、かと言ってレイトショーでみると電車通勤なら終電ギリギリになりかねない。
*日本国内では3D映画の人気が既にない
この作品は各劇場の上映スケジュールを見てみるとよくわかりますが、3D上映がかなり多い。なんならHFR(ハイ・フレーム・レート、簡潔にいうと通常より1秒当たりのコマ数を多くして映像を滑らかにする技術)という聞き馴染みのないワードもあり普通の人は??となるでしょう。
アバター前作を公開していた2010年前後では物珍しさもあり、日本国内でも3D上映は人気がありました。しかしながら3Dメガネの煩わしい感じややはり苦手と感じる人も多かったためか徐々に3D人気は廃れていきました。
分かりやすいのがその3D人気があった時代に「ニンテンドー3DS」というハードが発売された後に「2DS」という3D機能を撤廃したハードが地味に登場したのもこの要因と言ってもいいのではないでしょうかね。
世界では未だに3D上映も人気があるようですが、日本ではごく一部の作品を除き3D上映というものは滅多に見かけなくなりました。
*日本国内ではそれほど待望されていない続編だった?
全世界で最も稼いだ作品であり、日本国内でも興行収入150億円以上を記録した前作。
でもよく考えてみると皆さん、
「アバター」のストーリーって覚えてますか?
少なくとも私は既に完全に忘れていました。やはりTwitterやインスタ等を見ても内容を覚えていないという人をちらほら見かけます。
言い方は良くはないですが、ストーリーが優れていて売れたと言うよりやはり3D&当時としては革新的な映像技術が口コミで評判となり大ヒットとなったと言うのはやはり否定できません。そしてそんな前作の公開から13年経った今では当時のアバターの映像技術に匹敵する作品も多くなりました。
鑑賞された方の中には脚本やストーリーを評価する人も一定数いるかもしれませんが、このような映像技術が物珍しくなくなった今となっては当時の映像技術をウリにしてヒットしていた作品の続編を新たにヒットさせるのは中々難しいものかと思います。
思えば昨年、こちらも当時の映像技術がウリと言っても過言ではなかったシリーズ「マトリックス レザレクションズ」も約20年弱ぶりの続編となりましたが興行成績は日本では約14億(前作約50億)と散々でした。こちらはそもそも前作の内容を覚えていないと全く話が分からない初見殺し仕様であったり内容もボロクソ評価であったり、何かと役満状態で完全にお通夜状態であったにも関わらずブランドだけでよくそこまで稼いだな感までありますがね。
さいごに
最近「日本人は洋画離れしてしまっている」「ハリウッド大作が順当にヒットしないなんておかしい」といった意見もよく観ますがこれは私は違うと思います。
なぜなら今年だけでも「トップガン マーヴェリック」「ファンタスティック・ビースト3」「ジュラシックワールド」などといった作品は日本国内でもしっかりヒットしているため、結局のところその国の好みとの相性は当然あると思います。特にファンタビ3に関しては世界的に2と比較してあまり振るわなかったなか、日本では前作からそこまで勢いを落とさず約50億円を記録していたりしますのでなんだかんだ言っても世界3位の映画市場だと思います。
そして国産のアニメがハリウッド大作の興行を上回ることを悲観的に捉える人も多いですが、それだけ人気ということは「自国コンテンツが豊富」ということで逆に誇っても良いことだと思います。話は少し異なりますが、今やアメリカ以上とも言われる巨大映画市場を形成している中国でも海外の作品の輸入規制がスゴいとはいえ自国の映画作品がとても強い国です。
残念ながらアバターは「3D人気がない」「上映時間の長い作品は好まれない」など色々な観点から日本人にはそこまでこの続編を待望されていなかったと言うのが厳しい現実かと思います。
とはいえ年末年始というかき入れ時がまだあります。やはりこういった製作費のかかったハリウッド大作が不振だと今後このような大作も徐々に減っていく一方になるので出来るだけ日本国内でヒットすると良いなと思います。私も忙しいので中々平日には観に行けないですが、余裕のある時に観に行きたいなとは思っています。