2009年に日本国内初導入となった「IMAXデジタルシアター」は約15年の時を経て全国50劇場まで増加しました。IMAX社としては2021年時点で3年間で全国100劇場まで増加させたいと明言しており、現実的に実現するかは分かりませんが着実と導入劇場は増加しています。
アニメを中心に邦画でも続々と対応作品が増えてきているため、あまり映画を観ない人でも聞き馴染みも多くなって来たであろうIMAXですが、大きく4種類あるのはご存じでしょうか?
IMAXは大きく4種類に分類される
IMAXレーザー/GTテクノロジー(以下、IMAX-GT)
日本国内にある最もスペックの高いIMAXでもあり「グランドシネマサンシャイン池袋(東京)」「109シネマズ大阪エキスポシティ(大阪)」の2つの劇場のみに導入されています。
単純にスクリーンが「縦18m×横25m」とバカみたいに大きいのはもちろん、なんといってもの違いはIMAXフィルムカメラ(アスペクト比、1.43:1)で撮影された作品をフルサイズで堪能できるのが醍醐味です。他の劇場ですとこの比率では上映できないため本来撮影した映像をカットしている感じとなります。
以下に「IMAX-GT」とそれ以外のスクリーンの映り方の違いを紹介しているサイトがあるため参考までに。
IMAXレーザー
新規導入や従来のIMAXの設備を更新して導入した劇場も多く、2024年現在、主流のIMAXのタイプと言えます。導入劇場が多いので紹介は割愛しますがw
前述の通り、IMAXフィルムカメラで撮影された作品をフルで堪能することは出来ませんが「4Kスクリーン&12ch対応」(GTはもちろんこれらも対応)という高スペックと言えます。
IMAXデジタル(12ch対応)
IMAXレーザーが日本初導入される2018年より少し手前に主流となった、映像は従来通り2K画質ですが、音響が5chから12chへとレベルアップしたIMAXです。
(分かりやすく言うと、多数あるスクリーンのスピーカーを今まで最大5方向から違う音を出力できたところ、最大12方向から各々別の音が出力できるようになった)
IMAXデジタル(5ch対応)
2K画質&5ch対応という通常のスクリーンとほぼ同様のスペックながら、IMAX社によるリマスターをかけて上質な上映とした、従来のスタンダードなIMAXです。
IMAXレーザーが普及する前に導入かつ設備更新時期でない劇場を中心に現在も結構残っております。
「IMAXレーザー」は増えるけど、「IMAX-GT」は何故増えない?
まあ素人目ですので本当かは分かりませんが、理由は多分簡単です。
物理的に改修での導入不可
そもそもこの「IMAX-GT」ですが、「横幅22.86m以上」のジャイアントスクリーン向けに開発されたシステムです。
横幅22m以上あるスクリーンはIMAX等を除いた通常スクリーンに関して言えば、現在あるものでも「TOHOシネマズ海老名/スクリーン1(横22.6m)」「ユナイテッド・シネマ豊洲/No.10(22.6m)」ぐらいしかありません。加えてアスペクト比が異なり縦も約16m必要となります。
通常スクリーンとしては日本最大級ともいえる上記でも縦9~10mしかないことを考えると、あと縦6m必要となれば物理的に既存のスクリーンへの導入は不可能です。
メンテナンスコストが高い?
まあこれは関係者ではないので憶測にはなってしまいますが、これだけの巨大スクリーンですので「IMAXレーザー」であればプロジェクターが1台(シングルレーザー)ですが、IMAX-GTでは2台(ツインレーザー)となりますのでこれも普通にコストとしては大きいと思います。
またスクリーンも大きければ大きいほど、当然メンテナンスコストは自ずと高くなるでしょうし導入したら「はい、終わり!」と行かないのも中々普及しない要因でしょう。
「IMAXフィルムカメラ」で撮影された作品がそもそも少ない
これが一番の問題でしょうが、前述の通りIMAX-GTはただ巨大なスクリーンを堪能するためというよりは「IMAXフィルムカメラ(以下、IMAXカメラ)」で撮影された特殊なアスペクト比の作品を堪能するためのシステムです。
さて、そのIMAXカメラで撮影された作品がどれぐらいあるでしょう?これがまあそもそもIMAXカメラ自体が少ないんですよ。
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」が泣く泣くIMAXカメラでの撮影を断念したという話も
キャリー・ジョージ・フクナガ監督は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でIMAXフィルムカメラをもっと使いたかったが、クリストファー・ノーランが『TENET テネット』の撮影を始めたため断念せざるを得なかった(6台しかカメラが存在せず、そのほとんどをノーランが使うため) https://t.co/aln5R82P5N
— 𝙠𝙞𝙧𝙤𝙘𝙠𝙮𝙤𝙪 (@kirockyou) 2021年10月10日
現在はもしかしたら増えているかもしれませんが、IMAXカメラは6台しかないらしいです。まあそもそもこれで撮影できる作品は選ばれし者と言ってもいいほどレアな代物と言えるでしょうね。
邦画は「IMAX上映するのにカメラ使ってないのかよ」という意見もちらほら見かけますが、製作費が桁違いなハリウッド大作差し置いて使えないでしょうし、そらそうよって話なわけです。
(ちなみにIMAXカメラを使用していない作品のIMAX上映は、同社による映像や音響等のデジタルリマスターをかけて上質な上映システムとして提供しています)
IMAXにおける広めた功労者にして多大な影響力を持つ者?「クリストファー・ノーラン」
上記にも書かれている通り、007が途中でIMAXカメラでの撮影を断念したのはクリストファー・ノーラン監督(以下、ノーラン監督)の「TENET」を撮影するためにカメラ全台持っていたからのようです。この頃は新型コロナでゴタゴタしていたでしょうしスケジュール的にも「007」に対しての貸出期間が多分終わってしまったのでしょうねw
このノーラン監督ですが、2012年の「ダークナイト」から「インターステラー」「ダンケルク」「テネット」「オッペンハイマー」などほぼ全ての監督作品でIMAXカメラを使用しており、IMAXというものを広めた功労者とも言えます。
まあ逆に言えばこのノーラン監督が撮影していない時以外ぐらいしか、他の監督はIMAXカメラを使用できないのでは?と思ってしまうレベルではありますがね。
全米では最新作の「オッペンハイマー」が大ヒットなどヒットメイカーでもありますが、ハッキリ言うて日本国内でいうと監督の熱狂的ファンも多いですが大ヒットを記録できるような作品が多いという訳でもないので、ただでさえ数少ない「IMAXフィルムカメラで撮影された作品」のために導入するほど費用対効果がないのも事実ではあるでしょうね。
まとめ
個人的に「IMAX-GT」が増えない簡潔な理由は以下です。
まあこれに尽きるでしょう。あくまで巨大なスクリーンを楽しみたいのであれば、極論出来るだけ前列で観れば体感的には巨大に感じますからね。
IMAXフィルムカメラがもっと増えて対応作品が多くなれば、まあ将来的には「IMAX-GT」のスクリーンも日本国内に増えていくのではないかなと思います。